ごあいさつ
「この度、人間国宝、増村益城会長がごあいさつを申し上げるところですが、副会長中西が大変僭越ですが代わってごあいさつ申し上げます。
本日は、公私ともお忙しいところ、松田先生の生誕百年記念式典にご参列を頂き心から厚くお礼を申し上げます。
先生の生誕百年を記念しての事業計画は、平成3年度の当協会20周年記念事業として先生の漆字額限定100枚を頒布し、その寄付を基に浄法寺町及び記念協賛会のご配慮とご支援を頂き、本日先生の生誕百年記念碑除幕式のお祝いを迎えることが出来ました。只々大きな感激を致しております。次に記念漆芸展には、東京国立近代美術館のご厚意により、「玉すだれ蒔絵盤」を特別貸出して頂き、同美術館の諸山氏が作品をご持参下さいました。
松田先生は昭和12年に『時代椀大観』を刊行、「漆器の原点は椀」と椀に力を入れておりました。特にこの記念展に先生の椀を、と心掛けていましたのは時代椀を調べてみますと、一つの県で三つ名椀の伝統を持っているのは岩手県だけです。「浄法寺椀、正法寺椀、秀衡椀」過去にこれだけの名椀を造った「椀の故里」の皆様に先生の作品「竹雀漆絵椀」をおみせしたく、三越の美術部を通じて所蔵者のご厚意で持って参りました。先生の指導を受けた思い出深い作品、及び人間国宝諸氏の作品を展観出来ましたことを誇りと思っております。先生の人柄といいますか人徳といいましょうか、それぞれの人が自然に動いて協力しあい、今日の日を迎えることが出来たと感じております。特に浄法寺町の窓口になって頂いた岩舘正二氏と当協会の田中理事長のご尽力の賜と思います。この場を借りまして大変僭越ですが、協会を代表して厚くお礼申し上げます。
浄法寺町は昨日まで日本一の漆の生産地でしたが、今日からは我々が漆の神と仰ぐ権六先生の、日本に一ヶ所きりない生誕百年記念碑のある「ジャパン漆芸」の東北の拠点として、情報の発信地にて発展することを祈念致しまして私のご挨拶と致します。」
日本文化財漆協会「日本文化財漆協会会報79号」より引用
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