赤ちゃんのうるしデビュー。

ほんものがわかる子どもを育てる

子どもが小さいうちは、投げたり、落としたり、噛んだりしてあぶないからとプラスチックですます家も多いだろう。けれど、逆に、赤ちゃんのうちから、ちゃんとした器を使ってほしい。国産の木地に国産の浄法寺漆を使う漆器は、化学物質を心配しなくてよい安全な食器だ。漆の成分ウルシオールは、抗菌性が高く、耐性黄色ぶどう球菌、O-157、腸炎ビブリオなどは、6時間後にほぼ死滅するという頼もしさ。口当たりのやわらかさと、しっとりと肌にすいつくような塗面は魅力なうえ、すべりにくさも嬉しいポイントだ。熱も伝えづらいので、安心して持ち上げられる。落としたり、投げたりしても、壊れにくい。

漆にかぶれるのではと、心配する若いお母さんもいるが、漆がしっかりと硬化した漆器でかぶれることはほぼない。

実はこれ、酒器のこぶくら。小さいうちは小さめの汁椀代わりに、大きくなったらお酒を飲むのも悪くない。

使い方は自由なので、お箸など口に入れるものは自然なものがいい。子ども用のスプーンもある。箸、お椀、スプーンは、ギフトに人気。一つでもセットでも喜ばれる。

使い手がつくる浄法寺塗

浄法寺塗はあえて最後は光沢を出すための研磨をしない。最初はうるしのマットな質感を楽しんで、その後、日々使うなかで、自然に艶めいてくる。塗師の仕事は7割、残りの3割は使い手が育てる器になのだ。写真の左の椀は5年間使った漆器だ。

 

浄法寺塗は、シンプルで、箔や飾り物がないから、年齢も性別も問わず使いやすい。傷がついたり、はがれたりしても、漆器は修理が利く。だから臆することなく、暮らしに合わせて毎日の道具として使ってよいのだ。むしろしまい込むのが一番よくない。使うことで適度な湿気が与えられる。使い込まれることで、愛着のある特別な漆器に育っていくのだ。