二戸市海外発信事業2ndステージ2年目となる2017年は、浄法寺漆・浄法寺塗の価値をより高めるため、日本食レストラン・セレクトショップ等との商談、浄法寺漆展示会及び浄法寺漆および浄法寺塗、日本酒についてのレクチャー、ワークショップ、メトロポリタン美術館と連携した漆セミナーなどを開催しました。
今年度は、IPPUDO NY、Angel’s share、Kanoyamaなどニューヨークでも知名度の高い店舗との商談が成立しました。既に事業でモニタリングしている店舗も含め、質に重きを置いた商談を進めたことで、飲食店が持つブランド力と相乗的に浄法寺漆の価値をさらに高めることができました。
また、世界三大美術館のひとつ、メトロポリタン美術館とコラボレーションすることができ大変幸運であったと感じているとともに、引き続き連携を図っていきたいと考えております。
5年間に及ぶ海外発信事業を通じて、ニューヨーク総領事大使公邸でのイベントや世界三大美術館のメトロポリタン美術館におけるプレゼンテーション、また、継続した3年間市長によるトップセールスを実施するなど、世界の中心からの情報発信を行うことで、様々なメディアによる発信が図られたことや、現地における人的ネットワークが築かれ日本食レストランでのモニタリング事業に展開し、ニューヨークモデルの開発に繋がるなど浄法寺塗の新たな販路拡大・ブランドイメージの向上を図ることができました。
また、浄法寺塗がニューヨークで高い評価を得たことや、南部美人がインターナショナルワインチャレンジ2017で最高賞であるチャンピオンサケに選ばれたことなどにより、地域資源の良さを外部からの評価により改めて市民自らが見つめ直す機会ともなりました。
今後は、つながりで得られた人脈を活かし現地におけるフォローを継続しながら、ニューヨークモデルの漆器の活用や海外発信で得られたノウハウを活用した産業体験型観光の展開を図ってまいりたいと考えています。
(Ⅰ)ニューヨーク日本食レストラン・セレクトショップとの商談(10月23日~24日訪問)
<店舗開拓・個別打合せによるオーダー漆器の納品・浄法寺漆レクチャー>
他との差別化を図りたいと考える意識の高い日本食レストラン及びセレクトショップとの商談を行い、うち3件成約・納品に至りました。
商談にあたっては、現地コーディネーター経由で浄法寺塗のマーケティング調査を行い、どういった店へのアプローチがよいか吟味した上で商談候補を選定。選定後は、その店の要望を十分に反映させたオリジナル漆器の提案を図り成約へとつながりました。
日本食レストランの中には、浄法寺塗で提供する際は二戸市の地酒・南部美人と一緒に提供いただいている店舗もあり、これぞまさしくニューヨークで実現する漆と酒の「にのへ型テロワール」の体現です。
【商談・打合せ先】
(Ⅱ)浄法寺漆展示会及び浄法寺漆および浄法寺塗、日本酒についてのレクチャー、ワークショップの実施(10月20日~21日)
Nippon Club会員をはじめとする日本人コミュニティ、飲食関係者や美術関係者といった幅広い層の方々に、浄法寺塗の魅力を発信しました。
昨年度にはない大きめの作品を中央に展示し、美術関係者にも興味を引くような配置としたほか、通訳を常時配置し、来場者からの質問に対し一つずつ丁寧に答えることで、漆に対する理解普及とさらなる魅力の発信が図られました。
(Ⅲ)浄法寺漆および浄法寺塗、日本酒についてのセミナー、実演(12月7日)
事前に現地の飲食店等へニーズマーケティング調査を実施したところ、店舗での利用形態について多くの質問があったことから、本セミナーにおいて、「実際に漆器を活用した演出方法」「漆器既納入先のシェフによる料理の盛り付けによる演出」「バーテンダーによる二戸の地酒と漆器の演出」「漆器を知るための塗りの実演」を開催することで利用形態のイメージをより膨らませるとともに漆器の導入についての動機付けを図ることを目的として開催しました。
浄法寺漆展示会とも連動し、セミナー内ではオリジナル漆器既納入店である2店(Ichimura at Brushstroke、Kyo Ya)と今回納品したAngel’s shareにご協力いただき、オリジナル漆器を用いた料理、お酒の紹介を実施しました。二戸で一貫して作られたもの同士の漆×酒のコラボレーションに多くの聴衆がうなずきながら耳を傾けながらご賞味いただきました。
参加者の1人からは、「浄法寺漆展示会では手にとり触れるだけだったが、セミナーや漆器を実際に用いた試食会を通じて、『浄法寺漆×地酒』の奥深さを堪能することができて非常に良かった」という感想を頂戴いたしました。
塗りと彫りの実演や漆器を活用した料理の盛り付けの演出などを行ったことで視覚から、実際に料理を味わうことで味覚から、また、漆の歴史を含めた背景や製造工程に関する説明を加えることで、五感で味わい深い理解につながるセミナーとなりました。
また、浄法寺漆展示会と連動し、より深い漆と酒への理解を図るため、浄法寺漆および浄法寺塗、日本酒についてのレクチャー、漆塗りの実演、試食会などを開催しました。
漆レクチャーでは、漆の専門家で浄法寺漆認証委員会委員長を務める町田俊一氏による浄法寺漆、浄法寺塗にフォーカスした少人数レクチャーを開催しました。塗師による実演のほか、漆器の口当たりのよさについて、二戸の地酒・南部美人をぐい呑みで提供し、その良さを体感いただきました。漆セミナーに対する質問では、「刷毛にはどんな毛を使っているのか」、「ニューヨークで漆塗り体験キットは買えるのか」といったこれまでにない一歩踏み込んだ質問もあり漆そのものや漆器に対する興味関心と、これまでよりも深いアプローチが図られたと感じました。
また、飲食店や一般ユーザー、飲食店以外のセレクトショップ等での取り扱いや購入へ繋げるため、NYで人気の日本食レストランを会場に浄法寺塗と日本酒のPRも開催しました。
料理を引き立たせる浄法寺塗の魅力を、説得力あるシェフの言葉とともに、少人数の食のワークショップでご体感いただきました。ワークショップでは、塗師から、椀ができるまでのストーリーや思いが述べられ、参加者は大いに心を掴まれていた様子でした。
(Ⅲ)メトロポリタン美術館と連携した漆セミナー(10月22日)
メトロポリタン美術館では、2017年6月~2018年3月の期間「日本の竹工芸展」を開催しており、それと連動した竹工芸と漆のセミナーを「Sunday at The MET」のプログラムとして開催する機会をいただきました。
欧米人には馴染みが薄いことを念頭におきながら「漆」とは何か、塗ることでどのような効果を発揮するのかなどについて、発信しました。
広く世界に向け日本の漆、そして浄法寺漆を発信することができたと感じています。