滴生舎だより

Tekiseisha, the craftmen Blog

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2022.04.19

おわん展の作り手 〜岩舘巧さん〜

岩舘巧さんは浄法寺漆器工芸企業組合で上塗りを一手に担う、縁の下の力もち。

父・隆さん同様、一度は就職で県外へ出ましたが、地元に戻り、漆を塗る道を選びました。

 

 

以前、隆さんからは「息子達が子供の頃は自分も必死で行事の参加なんかもあまり出来なかった」

なんて話を聞いたことがあったのですが、

一方で巧さんは「思い出の風景にはいつも漆があった」と話してくれました。

幼少期、祖父母の家に預けられれば、漆掻き職人だった祖父の職人道具が手の届くところにあり、

漆の実で作ったコーヒーを淹れて飲んだりもしていたそうです。

工房へ行けば、そこでは淡々と漆を塗る父の姿。

特別と思ったことはなく、自然と自分の目の前に広がる日常風景だったそうです。

 

3人の子供のお父さんでもある巧さん。

我が子達もそんな風景で育っていると感じる?という問いに

「今の子達の方が漆が身近なんじゃないかなぁ」

という意外な返答。

現在の地元の小学生は、学校の授業の中で、地域の文化や資源として「漆」を学ぶ時間がしっかり用意されています。

滴生舎にも毎年二戸市内外から授業のツアーがきて、子供達に漆の仕事のお話をします。

たまに「うちのおじいちゃん、漆掻き職人なんだよ」なんてこっそり誇らしげに教えてくれる子も。

巧さんと隆さんも、子供たちにとって自慢のお父さんとおじいちゃんでしょうね。

 

 

巧さんは数年前、二戸市の事業でNYへ行く機会がありました。

何箇所も話題のお店を巡り、いただいたご縁で特注品を作った経緯も。

 

巧さんのぼかし塗りで仕上げられたバーテンダーの道具

 

NYで活躍するバーテンダーのナナさんは、岩手出身というご縁!

 

ふだん思いつかないようなアイディアで提案されるなど、刺激にはなったものの、

それを商品に落とし込む難しさを改めて感じたそう。

 

 

「おわん展」では巧さんのオリジナルアイテムが登場します。

父親が作り続けたことで受け入れ先が決まっている商品を塗るのと、全く世に出ていない商品を塗るのは、心持ちも違ったそうです。

不安をこぼしつつ、「自分で作ったものを自分が使う楽しみもある」という一言に、色々思いを巡らせて生み出したんだなと、こちらもなんだか微笑ましい気持ちになりました。

隆さんが製作途中をこっそり見せてくれました。全貌はイベントが始まってからのお楽しみ。

ワクワクと不安が入り混じる初お披露目、滴生舎としては楽しみにしております!

また、巧さんは5月5日(木)に、実演で在廊してくださいます。

漆器作りの話、新作の話、色々尋ねてみてくださいね。

 

記 塗部屋のM

 

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「おわん展」

手のひらにしっくりくる漆のお椀を、じっくり探してみてください。

会期:2022年4月29日~5月8日

8:30~17:00 (会期中無休)

会場:滴生舎

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