2022.04.20
佐々木暢子さんは進学先だった会津で漆器と出会い、安代漆器センターでの研修を経て独立。
滝沢に工房をかまえ活動されていた時期もあるので、その頃から暢子さんの漆器を楽しみにしているというお客様に出会うこともあります。
秋田のご実家に戻られて製作する今でも、継続して岩手県内のイベントに出展されていて、滴生舎にも事あるごとに寄ってくださる身近な存在。
暢子さんの器は、可愛さと大人っぽさを兼ね合わせた魅力があります。
まり椀のようなコロンとしたお椀でも、幼くなりすぎず絶妙。
でもやっぱり、子供のほっぺのように、包み込みたくなるんだよなぁ
まり椀は作り続けられてきた人気者。
引く手アマタで、普段は朱と溜の2色が揃うとも限りませんが、今回の企画展では並んだ姿を見ていただくことができそうです。
写真右下が「まり椀」。滴生舎ではお馴染みのお椀の一つ。
てっきり暢子さんのお椀史上一番古いのがまり椀かと思いきや、それは合鹿椀でした。
当時漆器業界で合鹿椀が一つのブームだったということで、若き暢子お嬢さんは製作にチャレンジするのですが、その頃はまだ漆専用の刷毛を持っておらず、代用品でできる仕上げなどを工夫しながら取り組んだというエピソードが。溢れんばかりの製作への熱に感服です。
最近、暢子さんは地元鹿角で漆林作りも手がけ始めました。
私が連れて行ってもらったのは、昨年の秋。
見晴らしが良く、爽やかに風が抜ける暢子さんの漆林。こんな健やかな環境から採れた漆が漆器になっていくんだなと想像するだけで、心が満たされます。
山を越えてすぐお隣の地域とはいえど、雪の質や季節のペースは違うもの。
まだか細い木が重い雪で折れるなど、四苦八苦することもあるようですが、一本一本木の成長具合を確認しながら林を案内してくれる暢子さんは、漆を塗っている時とは違う格好良さがありました。
これは暢子さんが用意してくれたきりたんぽ汁。たまらん!
ひとたび工房へ戻れば、職人スイッチがオン。
どんどん手際良く塗り進める様子は、同業者でも飽きないものです。
滴生舎の工房チームからすれば大先輩の暢子さんですが、それでも今時期のような季節の変わり目は風呂(漆を硬化させる場所)の管理が難しいとこぼします。一部屋の中にある2台の風呂でも、調子が違うのだとか。暢子さんですらそうなんだ~と、ちょっとホッとするような、気の遠くなるような。
暢子さんはお箸も素敵。さらりと描く漆絵も美しいです。おわん展に出品してもらえるようなので、お楽しみに。
(数量限定です!)
暢子さんは5月3日(火)に、実演で在廊してくださいます。
器の話、漆林の話、色々尋ねてみてくださいね。
記 塗部屋のM
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おわん展」
手のひらにしっくりくる漆のお椀を、じっくり探してみてください。
会期:2022年4月29日~5月8日
8:30~17:00 (会期中無休)
会場:滴生舎
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《前の記事》2022/04/19
岩舘巧さんは浄法寺漆器工芸企業組合で上塗りを一手に担う、縁の下の力もち。 父・隆さん同様、一度は就職で県外へ出ましたが、地元に戻り、漆を塗る道を選びました。 &...続きを読む
《次の記事》2022/04/21
山崎菜見子さんは、かつて滴生舎工房を支えたメンバー。 今は独立して、町内に工房をかまえ活動しています。 ここ数年、夏の間は漆掻き職人として山へ通うスタイル。 自身...続きを読む