2020.11.16
少し前のことになります。
漆の葉も黄色に色づき、収穫の秋を迎えた過日。
漆かき職人さんが今季採取した漆を持ち寄り
専門家に品質を評価してもらう、1年に一度の漆の品評会!
「浄法寺漆共進会」が10月18日に行われました。
いつもは一般公開されており、気になった方もいらっしゃると思いますが
感染症拡大防止のため、今年は招待客と関係者のみの開催となりました。
審査の前には、日光社寺文化財保存会の佐藤則武氏による特別講演も。
建造物の修復で使う漆の量や、使い分け、良い漆の見分け方など
写真も交えたかなり具体的な内容で、
漆掻き職人からも質問が飛び交う場面がありました。
とても興味深かったです。
今年はシーズンはじめから雨が降ったり止んだりと
思うように仕事が進まず、
例年より小さめの樽が多く並んだ印象ですが
質は上々とのこと。
約40人の漆掻き職人が参加し、
80を超える漆樽が並びました。
漆は採取した時期によって
「はつ」「さかり」「すえ」と分けて保管され、出荷されます。
それぞれ質が異なるため、
私たちもその特徴をふまえながら
下塗り用、上塗り用などに分けて精製をしています。
審査は、これまた独特で、樽にヘラを入れて
色や粘り、底のたまり、のびのよさなどをみて評価します。
3部門ごとに3点ずつ、
特徴にあったものが賞に選ばれるようです。
「底カス」と呼ばれる沈殿物をみています。
「ヘラ立て」 つーっと流れるのびのよさなどをみています。
蓋紙についた漆から、乾き具合もチェックします。
ひとつひとつにおいや柔らかさ、表情が違うから、おもしろいです。
新鮮な漆のかおり。
職人のまなざし。
あちらこちらで交わされるマニアックな会話。
活き活きとした雰囲気は相変わらずといったところ。
共進会は、漆掻き職人さん同士の情報交換の場であり
私たち塗師にとっても滅多にない貴重な交流の機会。
「今年はどうでしたか?」
挨拶を交わしたり、
お元気そうな顔をみれて安心したり。
短い時間で交わす職人さんの言葉は
なんだかいつもずっしりと重みがあって、
自然を相手にすることの難しさや、
それぞれの漆にかける思いを改めて感じた1日となりました。
私たちがこうやって毎日漆と向き合い
漆器を製作できるのも、
今までがあってこそ。
そして、今がんばっている人がいるからこそ。
今後もこの地で一貫したものづくりを続けていくために、
精進あるのみ!!です。
塗り部屋 U
《前の記事》2020/11/12
10月28日㈬~11月10日㈫まで 松屋銀座7階デザインコレクションで開催しておりました 「いわてのうるし浄法寺漆」展 おかげさまで無事終了いたしました。 ...続きを読む
《次の記事》2020/12/16
早いもので12月も後半ですね。 二戸はリンゴがおいしい季節です。 12月といえば、毎年恒例の渋谷ヒカリエ8階 d47 design travel store で...続きを読む