うるしの森から

国内で使用される漆のうち、国内産はわずか3%たらずだ。かつては漆器の産地は漆の産地でもあった。伝統的工芸品の漆器の産地は1府16県あるが、漆を生産している県は、わずか1府9県。国産漆の生産地は県別では岩手県がトップで、平成27年は、岩手県が821㎏、次が茨城県の178㎏、栃木の120㎏とつづく。国内生産量の約70%が岩手県、その全量を二戸地域の浄法寺漆が占めている。

二戸市浄法寺町は日本で一番うるし掻き職人が多い場所だ。昔から漆の産業が盛んで、地名にも漆沢、漆畑、漆原などが残っている。40年代以降、全国的に漆の生産も、職人も減少したのは、ここ浄法寺も同じだ。それをくい止めようと、浄法寺では昭和53年から、ウルシの木の植栽を始めた。その結果、国内最大の原木資源を誇る地域となっている。11月13日のうるしの日には記念植樹も行っている。

国産漆の産地・主な漆器の産地

国産漆の産地・主な漆器の産地

図表
1 国内、岩手県、浄法寺漆生産量 出典 林野庁特養林産基礎資料、二戸市
2 各地の伝統的工芸品の漆器産地

漆器の産地(経済産業大臣指定伝統的工芸品)

青森県 津軽塗(1975年)
秋田県 川連漆器(1976年)
岩手県 秀衡塗(1985年)、浄法寺塗(1985年)
宮城県 鳴子漆器(1991年)
新潟県 村上木彫堆朱(1976年)、新潟漆器(2003年)
福島県 会津塗(1975年)
神奈川県 鎌倉彫(1979年)、小田原漆器(1984年)
長野県 木曽漆器(1975年)
岐阜県 飛騨春慶(1975年)
石川県 輪島塗(1975年)、山中漆器(1975年)、金沢漆器(1980年)
富山県 高岡漆器(1975年)
福井県 越前漆器(1975年)、若狭塗(1978年)
京都府 京漆器(1976年)
和歌山県 紀州漆器(1978年)
山口県 大内塗(1989年)
香川県 香川漆器(1976年)
沖縄県 琉球漆器(1986年)

うるしの森は「文化財の森」

国宝や重要文化財などの大切な国の宝を、後世に伝えるには修理が必要だ。日本の文化財のほとんどは、天然の材料でつくられているので、漆器などの補修に使う漆、茅葺き屋根の茅などの資材の確保と、これらの資材を扱う技能者を育成しなければならない。このため、文化庁では、資材の供給林及び研修林となる「ふるさと文化財の森」を設定して、技術の研修、普及啓発事業を行う「ふるさと文化財の森システム推進事業」を実施している。

二戸市が所有する明神沢地区の約4haのうるしの森は、「ふるさと文化財の森」第一号として、平成19年に認定を受けた。市内全域では、ウルシ林が144ha、ウルシ原木数が21万本となっている。ウルシ苗木補助制度によりウルシ木植栽を推進している。

ふるさと文化財の森

浄法寺漆には、認証マークがついている。

浄法寺漆認証マーク

認証マークは、漆の英語表記”japan”や”joboji”の頭文字jを基調に、日本列島、漆を掻いたキズ、漆の滴り落ちる様子を表現している。

「浄法寺漆認証マーク」は、良質で信頼性のある浄法寺漆の証明。

信頼性のある供給と、付加価値化による市場競争力の強化、漆掻き職人の生産意欲の向上を目的に、平成20年に二戸市と岩手県が共同で創設した制度。国産漆で初めての認証制度で、第三者機関である認証委員会が品質を保証している。

認証の基準

  • ◯漆掻き職人に関する基準
  • ア 岩手県浄法寺漆生産組合の組合員であること。若しくは主として二戸市浄法寺町で伝統的に行われてきた漆掻きの技術により採取するもの。
  • イ 浄法寺漆認証委員会が特に認めたもの。
  • ◯地域に関する基準
  • 下記に掲げる地域で採取したものであること。
  • ア 岩手県全域
  • イ 青森県三戸郡、八戸市、十和田市
  • ウ 秋田県鹿角郡小坂町、鹿角市、大館市
  • ◯品質に関する基準
  • ア 増量等を目的として意図的に異物を混入させていないこと。
  • イ 浄法寺漆以外の漆を混入させていないこと。

日本うるしの守り人

日本うるし掻き技術保存会

平成8年1月に設立した日本うるし掻き技術保存会は、技術保持者が減少するなかで、「うるし掻き技術の継承」と「漆の生産量の確保」を目的に発足した。同年5月、文化財の保存のために必要な伝統的な技術で保存の措置を講ずる必要があるとして、文化庁から選定保存技術「日本産漆生産・精製」技術の保存団体として認定。平成28年までに42人の長期研修生を受け入れたり、記録動画や冊子を発行するなど、日本産漆生産に関わる啓蒙活動を実施している。

認定書
うるし掻きの道具〈工藤竹夫さんの道具〉

うるし掻きの道具〈工藤竹夫さんの道具〉

  • 1 キベラ ゴングリやタルガケの漆をこそぎとる道具
  • 2 タルガケ (3貫用) 漆を漆樽に移す際、漆樽にかけてゴングリをこそぐ道具
  • 3 タルガケ (5貫用) 漆を漆樽に移す際、漆樽にかけてゴングリをこそぐ道具
  • 4 ゴングリ 漆を採取したタカッポから漆樽にうつすときに底までこそぐ道具
  • 5 エグリ 裏目掻きの際に、漆カンナのかわりに使う
  • 6~8 漆カンナ 木にキズをつける羽根と、樹液を出やすくするためキズに切込みを入れるメサシがついた道具
  • 9~11 ヘラ 樹液を掻き採るための道具。小さいものは枝掻きのときに使う。
  • 12 枝採りナタ 枝掻き用の枝を採取するために使う
  • 13 皮取りカマ 木の表面を平らにするために薄く皮をはぐ道具

〈主な活動〉

■1 伝承者の養成

 漆かき技術の習得希望者を受け入れています。

長期研修 (6月から10月までの原則5カ月間を実施) 年間2~3名程度

短期間体験研修 (3日間)シーズンごとに実施日程を設定

■2 技術・技能の錬磨

 技術保持者に対する支援を主としたもので、用具類の確保や生産した漆の成分分析、全国の漆・漆器産地の視察調査及び関係者との相互交流を行っています。

■3 記録の作成及び刊行

 「漆」にかかわる技術の把握を目的とした総合調査、漆掻き職人のくらしと技術の聞き取り調査、日本産漆の特性を把握するための漆器製作、漆掻き道具の製作工程雛形製作などの記録作成のための事業を行っています。

これまでの刊行物

◆平成11年度 『漆‐うるし掻きに生きる職人のくらし‐』

◆平成17年度 『漆かき職人の一年‐大森俊三の技術‐』

◆平成26年度 『木をつくり漆を掻く‐鈴木健司の技‐』

■4 その他

 要請に応じて行政、博物館などの研究施設、報道関係などへ情報・資料提供を行い、保存会や「日本産漆」に対する理解と周知を図るなどの活動を行っています。

事務局 日本うるし掻き技術保存会事務局(二戸市漆産業課内)

TEL:0195-38-4472 FAX:0195-38-2218

うるしびとの物語

漆を掻くひと、漆を塗るひと、漆掻き道具をつくるひと…
この地域に生きる、うるしを生業として生きる人々の物語を集めました